ぼくのネタ帳

映画や日々の考えについて書いてます。

映画『新聞記者』/ ネタバレ感想/ あんま面白くなかった…。でも

今更ですが、映画『新聞記者』を見てきました。

 

予告編はこれ。

 

 

わけあって平日昼間に有楽町で見たんですが、劇場はかなり混んでました。

公開4週目であれはすごい。高い評価を聞いて駆けつけた方がたくさんいるのでしょう。

で、ぼくの感想ですが。

 

点数:60点

あんま面白くなかった。。

 

ぼくはもともと、メディアの報道の自由の問題とか、監視社会化への危機感とか、そういったことにあんまり興味が持てません。 だからこの映画も、そういったイデオロギーは脇に置いて、一本の映画として見たつもりです。

で、そうやって見てしまうと、けっこうこの映画は単調なんですね。ウェットな演出で、淡々と重苦しい雰囲気がつづく。展開にも大きなひねりはない。最後の方に重要書類の写真を撮ってくる、という取ってつけたようなサスペンス展開がありますが、それも何百回と見た感じの盛り上げ方だしね。

それから内閣情報調査室の描写だけ、ちょっとフィクション要素が強くなりすぎでは?と思った。異様に薄暗いオフィス、怖い顔の上司などなど。わざわざあんなエリート官僚にツイッターをやらすかな…?あと、「あなたのお父さんの記事ね、誤報じゃなかったんですよ」って、あんな意味のない挑発の電話するか?とか。ちょっと疑問の残る描写は多かったです。

そんなわけで、全体としては好きな映画ではなかった。

 

でも一点、背骨がしっかりした作品だったので、そこはいいと思いました。

つまるところ本作のテーマは「正しさを貫くことの難しさ、高潔さ」かと思うのです。

松坂桃李演じる主人公の桐原は、すべてを持っている男として登場します。

若きエリート官僚。給料はよく、高そうなマンション暮らしをしている。

奥さんは本田翼(可愛くて優しくて、包容力もある)。赤ちゃんも生まれてくる。

それら、彼の持っているものがどれほど素晴らしいかが、映画全編に渡って丹念に描かれます。 だからこそ、彼の選択には重みがある。

亡き恩人の意思を汲んで政府の秘密を暴露することは、文句のつけようもなく正しい行いです。自身の倫理観にも沿うし、生まれてくる子供や妻にも顔向けできる。 でも、そのためには、キャリアを失う覚悟、家族を路頭に迷わせる覚悟を持たないといけない。これは怖い。 ぼくはエリート官僚ではないし、奥さんは本田翼ではありません(というか彼女もいません)。でもこの怖さはわかります。

そして、だからこそ、それでも正しさを貫く決断をする彼の高潔さが光ります。 最後、青ざめた顔で官庁から出ていく桐原はもうフラッフラで、ほとんど死人みたいで、「英雄」って感じではないです。

だけど、それほどの恐怖にも、彼はやっぱり負けなかった、ということの方に感動しました。 社会的な名声よりも、正しさを選ぶことって、時としてこんなに怖くて、だからこんなにすごいことなんだな、と思いました。

最後の場面でシム・ウンギョン演じる吉岡記者が駆けつけてくれたのもよかったです。彼女はこの世界でほとんど唯一、桐原の決断の本当の重みをわかっている人物。こんなにフラフラだけど、このひとすごいってわかっている人が来てくれてよかった。それだけで少し報われた気がしました。

 

映画は主人公たちの大勝利では終わりません。 ただただ、引き返せない戦いを始めてしまった、というところで終わります。そこも潔くていいです。

(結果いかんは置いといて、)こういう勇気を持って決断できる桐原ってすごくない?という作り手の問いかけを感じました。

 

そんなわけで、難しいことは抜きにして、しっかり感動の残る映画でした。ここまで単調でなければ、好きな映画になっていたかもしれない。

ぼくなんて実生活ではほとんど正しさの逆ばっかりやっているような人間だけど、少しは勇気を持たないといけないな、と思いました。

 

それにしても、松坂桃李はなんていい役者なんだ。

この間観た『彼女がその名を知らない鳥たち』でのクズナンパ野郎っぷりも本当によかったけど、今回は今回で、正反対の人を演じているのにちゃんとそういう人にしか見えない説得力がある。

今後彼が出てる作品はしっかりチェックしようと思いました。