ぼくのネタ帳

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実写版『アラジン』感想/ 面白い!けど実写化の限界も感じる

実写版の映画『アラジン』を見てきました。

 

予告編はこれ。


映画「アラジン」特別予告編

 

 

点数: 70点 

アニメと比べて、いいところもあり、悪いところもあり。

 

期待していた通り、なかなか良かったです。ディズニー・ルネサンス(wikipedia)のディズニーアニメを現代の映像技術で実写化する流れで言うと、一昨年の『美女と野獣』に続いて二作目。

 

美女と野獣 (字幕版)

美女と野獣 (字幕版)

 

 

美女と野獣』は、少しばかり現代的な解釈や新要素を盛り込みつつ、基本的にはなるべくオリジナルのアニメ版を忠実にコピーしようとした作品でした。だから、アニメ版を好きだったぼくは、やっぱり普通に面白かった。

 

今作『アラジン』も全く同じ路線。オリジナルの完コピ+αで現代的な再解釈・新要素という感じ。なので、アニメ版がすきなら最低限の面白さは保証されているわけです。とはいえ、オリジナルへの愛が深ければ深いほど、小さな違いに不満が生まれやすくもあるわけで。

 

以下、よかったところと悪かったところとで、それぞれ考察したいと思います。

ちなみに吹き替えではなく、字幕で見ました。吹き替えも、ジーニーを山ちゃんがやるということで気にはなったんですが、アラジンを演じた中村倫也の歌声を聴いて、やめとこうと思いました(役者としては大好きです。『愚行録』とか本っっ当に最高)。

 

中村倫也の歌う「ホール・ニュー・ワールド

 

まずはよかったところ。

 

①主人公カップルを演じた役者さんたちの魅力

アラジンとジャスミンを演じた二人はとても魅力的。あくまでも個人的な意見なのですが、もともとアラビア系、インド系の人って表情の変化が読み取りづらいというか、少し硬い印象があります。そういう意味では、今回の主演二人もアニメ版程に表情豊かではないものの、実写ゆえに二人の「美しさ」が際立っていました。

眼福眼福、と思いながら美男美女カップルを呑気に堪能させていただきました。

 

②映像技術

ジーニーがらみのシーンにおけるハイテンションな魔法描写は、実写だからこそ驚けるなと思いました。フレンドライクミーとか、ドラッギーで良かったです。カットごとにジーニーのサイズが違ったりして、クラクラしました。アニメは変幻自在で当たり前(むしろただの「絵」なのに、そこにいるように見せる実在感を出せることの凄さを見せるメディアかなと思う)ですが、これを実写でやられると驚きの連続で、単純に楽しかったですね。

 

ジャスミンのキャラ立ち

ジャスミンウーマンリブの象徴みたいになっているのは、現代的というよりは、今の時代にやるならこうせざるを得ないよね、と言う感じもありました。彼女が歌う「Speechless」は、実写オリジナルの曲ということもあってちょっと浮いていましたが、作り手がそれでもこういうメッセージ性の強い歌を入れ込んだというところに、「意味のあるリメイクにするんだ」という気概を感じました。

スピーチレス~心の声

スピーチレス~心の声

  • provided courtesy of iTunes

結局、見終わって印象に残っているし、何度もサントラを聴いているのはこの「Speechless」だったりします。

ストーリー的にも、最後はちゃんと彼女が王になるということで、一貫性がありました。もはやプリンセスではなくなってしまいましたけどね。このためにアラジンの影が薄くなっているという意見もあり、面白いと思いました。

 

つづいて、悪かったところ。

 

❶動物キャラの「ただの動物」感

アニメ版の『アラジン』には以下のように多くの動物キャラが登場します。

・猿のアブー(アラジンの相棒)

・虎のラジャー(ジャスミンのペットであり友達)

・オウムのイヤーゴ(ジャファーの手下)

それぞれに「人格」を持ち、人間キャラと同等の濃いキャラクターとして描かれています。アブーとラジャーはそれでも獣という感じですが、イヤーゴなんて、ぼけ気味の王様よりよっぽど頭良さそうです。

これらのキャラは実写版にも登場するのですが、それぞれどういう立ち位置になっているかというと、

・猿のアブー(アラジンのペット)

・虎のラジャー(ジャスミンのペット)

・オウムのイヤーゴ(ジャファーのペット)

このような扱いです。

実写版『美女と野獣』の城の家具たちにも同じ不満を持ちましたが、非人キャラたちのデザインが実写に寄りすぎなんですよね。実写化にあたってある程度のリアリティを保ち、大人が見てもバカバカしくないルックにするためには、止むを得ないことなのかもしれません。

今回の1匹と1頭と1羽は、CGと実写を組み合わせてゴリゴリにリアルな獣キャラに変換されています。喜怒哀楽があって、ある程度複雑な指示も解するペット、というバランスです。

イヤーゴだけは唯一喋れますが、うーん。。あの声音は現実のオウムが「モノマネ」するときのやつですよね。あまり感情が伝わってこないです。アニメのイヤーゴは、普通におっさんの声で喋ってて、別にモノマネの声っていう設定じゃないと思うんですけどね。でもたしかに、イヤーゴだけ人語を喋っていたな。あれは一応、モノマネ声って設定だったんですかね。ともあれ、アニメではすごく人間臭い魅力的な悪役キャラなのに、実写は賢い鳥くらいのバランスになっているので、そこは大いに見劣りするかなと思いました。

一方で、魔法の絨毯は全然悪くなかった。とても可愛くて良かったです。そのまま実写化しただけで、違和感はありませんでした。

動物キャラは、動物を人間的に描こうとして失敗。絨毯は、モノを動物的に描こうとして成功、という感じですかね。後者の実写化は、不思議と魅力が劣化しないんだな、と思いました。『美女と野獣』の家具たちもイマイチだったことを考えると、モノでも動物でも、「人間的に」描くというところに難しさのポイントがあるのかもしれません。

そういう意味では、この夏に控えている実写版『ライオンキング』は、ある意味全キャラクターが動物→人間のアプローチなわけで、少し不安。予告編を見ても、外見は普通にフッサフサのリアルライオンですからね。

 

❷敵役・ジャファーの魅力のなさ

ここは正直がっかりしました。アニメ版のジャファーは、なんともいってもビジュアルの癖の強さが大変魅力的なお方。はっきり言って大好きです。権力欲のみの、直情的で単純な悪キャラかもしれないですが、悪さも極まるとかっこいいというか。実写版は、役者さんに癖がなさすぎました。一目でこいつはずるいとわかるぐらいの、個性的な俳優さんにやってほしかったです。ハビエル・バルデム(Wikipedia)くらいの怪優が出てきたら最高でした。

井戸に人を突き落としたり、人として「アウト」な残虐さをちゃんと見せていたのは実写ならではでよかったのですが。

 

❸王の魅力のなさ

親父が、ただ単にだめな親父です。アニメ版のように、お調子者で気のいいやつだからこそ、ジャファーに裏切られて操られるのが不憫、と言う感じはないです。偉大な王っぽい立ち振る舞いでありながら、結局はアニメ版と同じダメな人、ということで、よりむかつくキャラになってました。

 

❹「ホール・ニュー・ワールド

名曲「ホール・ニュー・ワールド」の映像は綺麗でいいのですが、せっかく絨毯に乗ったのにご近所を回って終わりというのは少しがっかりしました。

ジャスミンが王を目指しているのに市民のことをよく知らないということで、アグラバーの町を見せる、という意味はわかります。あと恐らくは、実写ゆえにアニメよりリアリティラインが高くなっているので、いくら絨毯が速くても一晩で世界一周級の旅行をさせるのは無理がある、という判断だったのでしょう。

わかります。

でも実写版のホール・ニュー・ワールドのスケール感だと、whole new world=全く新しい世界が開かれた、という感じはしないですよね。なにせご近所一周ですから。それに、いくらジャスミンがお城に軟禁されているとはいえ、普通に昼間に町に出たりはしているわけで、町を初めて見たわけではありません。夜の町を上から見たくらいで世界がガラッと変わるという感じはしないです。

 

以上、いいところ、悪いところのまとめでした。

 

全体として、いいところはあるし、満足はしているけれど、それなりに不満もある、という感じでした。オリジナルのアニメ版を見返して細かいところを比較して観るのも面白いかもしれません。 

アラジン (字幕版)

アラジン (字幕版)

 

 

ディズニー実写化の流れは、ファンとしては素直に嬉しいです。まず間違いなく、『ノートルダムの鐘』や『リトルマーメイド』もこの流れで実写化されるんでしょう。あれを現実に置き換えるとどうなるのか、それは超絶楽しみ。絶対見ます。

見ますけど、アニメの歌を完コピするという縛りがある限りは、パチモノ感というか、ごっこ感は拭えないな、とも思います。どんなによくても70点の感動どまりじゃないかな、と冷めた目で見ている自分もいます。

 

今後の実写化で、そんな侮りを覆すような大傑作があるといいなと、心から願っています。

 

追記:次は『ムーラン』らしいです。しかもけっこう本格的な、中華大河っぽさ溢れる予告編。ワクワク。