即興で絵を描くこと
絵を描くのがすきだ。
iPadのノートアプリを使って、そのときそのときで描きたいものを描く。apple pencilの書き心地は本当に素晴らしくて、ほとんど実際のペンさながらである。その上、デジタルならではの色ぬりや書き直しの容易さもあるので、ちょっとでも絵がすきなら病みつき間違いなし。
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さて、即興で絵を描くときには、最後にどんな絵ができあがるのか自分でもわからない。たとえば、最初に人の顔を描いたとする。そしたら、次は体を描くのが自然だから体を描く。体を描くときには、どんな服を着せるのか(あるいは着せないのか)、どんな姿勢をさせるのかの選択が必要なので、気分で適当に決めて描いていく。
そんなふうにあくまでその場その場の必要にかられて描くものを決めていき、できあがったものを見てみると、全部のパーツが自分の記憶や考えたことを材料としていることがわかる。
たとえば。
これは今年の春に描いたもの。知ってる人には一目瞭然かと思うが、ぼくの絵は松本大洋先生の画風のパクリである。中学のとき『鉄コン筋クリート』が大好きで、真似して描いていたせいだ。
さてこの絵だ。一通り描き終わってから、この絵が意味することを考えた。これはきっと、幻の、理想の女の子との出会いを待っている、ひとりぼっちの少年の絵である。桜とともに春が来て新しい出会いの気配を感じ、ひとり妄想にふけっている彼は、ぼくの分身だ。
ぼくはこの絵を描いたとき、付き合っていた彼女とうまくいかなくなって別れようとしていた。どこからか、理想の女の子が目の前に現れないものか、と勝手な夢想をしていた。それが表面化して、こんな絵を描いたわけだ(たぶん)。
さらに、この女の子はよく考えたら、小学校のときすきだった子がモデルだ。いつもこんなふうにショートカットで、かわいい襟のシャツを着て、長いスカートを履いていた。そして彼女の名前は「さくら」と言った。この絵を描いた少し前に、さくらが結婚したことをfacebookで知ったのだった。
このように、即興で絵を描くときには、(無意識に)そのとき自分の頭の中を占めているものを材料にする。逆に言えば、絵を描けば今自分の頭を占めるものが何か、がおぼろげながらわかってくる。
絵は面白い。