ぼくのネタ帳

映画や日々の考えについて書いてます。

映画『時をかける少女(1983)』の感想

先日尾道に行って、まだ見てもいない映画『時をかける少女(1983)』のロケ地を回ってきました。

 

 

で、帰りの新幹線の中で、本編『時をかける少女(1983)』を見たので、その感想をば。

 

点数:**点

つけられない。。でも面白かった!!

 

予告編はこのような感じ。

 

まず第一に、噂にたがわず相当に変な映画ではありました。

チープな演技、チープな演出、随所に挟まれる性の匂い、などなど。 ただ、そのあたりは作り手としても意図的なものでしょうし、のん気に笑って見ているのが正しい態度だと思うのです。

そして、序盤〜終盤、それこそ上映時間の90%はそんな調子だからこそ、最後10%が猛烈に活きてくると思うのです。これには痺れました。エンディングを最後まで見終わって、新幹線の座席でジーンとしている自分に気づいて、素直にうれしかった。なるほど、これがあるから名作なんだな、と思いました。

 

何がそんなによかったかというと、終盤の演出の緩急がすごいんです。

ざっくり、以下のようなシフトチェンジがあります。

(1)タイムトラベルシーン

この映画の終盤は、怒涛のタイムトラベルシーンからはじまります。それまでも前述の通りチープで変わった演出だったと思いますが、ここはその極地。映像的には、初期ウルトラマン的特撮と言えばいいんでしょうか。主人公・和子(原田知世)がいろんな時間・場所を飛び回るのですが、音楽もどんどん昇りつめて、終わりに近づいてるなあという感じがします。わけのわからないドライブ感があって、楽しいシーンです。

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(2)土曜日の実験室

タイムトラベルが終わると、和子と深町くんの別れのシーン。深町くんが、自分は未来から来たタイムトラベラーであることを打ち明けるのですが、ここで予想外の真相が。和子が深町くんに好意を抱いていたことすらも、実は捏造された記憶によるものだった(正確には、他の男子との思い出を借りている)。

和子は、それでも私はあなたが好き、あなたも私にそう思ってくれているんでしょう、とすがります。勘違いからはじまったかもしれないけど、今この感情はたしかにあるんだって、これは普通の恋愛についても言えることですよね。

さらに、深町くんが帰ったら、和子も深町くん自身も、互いについての一切の記憶をなくしてしまうとのこと。

これは切ない。。かわいそう。。

  

(3)数年後。。

そしてワンカットで数年が経ち。おてんば女子高生だった和子は、物憂げな薬学部の院生?になっています。深町のことは忘れているけれど、無意識に彼を求めてか、薬学の研究に没頭しているようです。

そんな和子と、また未来から来たらしい深町が、薬学部の研究棟らしき建物の中ですれ違う。深町が実験室の場所を聞き、和子が答える。そしてそのまま別々の方向へ歩いていく。ふたりは互いにふりかえるが、(覚えてはいないので)それ以上干渉はせずに離れていく。。

うわあ、切ない。。。。。

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(4)エンドクレジット

ターンタタタ、タッタッタターン、あなた、私の元から〜♪

最高すぎます。これほんとに痺れました。

「はい、みなさん、思い出しました?今ご覧いただいたのは、この可愛い女の子・原田知世ちゃんのためのアイドル映画ですよ!大丈夫、この子はこんなに楽しそうで、未来には何の不安もないという顔で笑っています!この子の未来は明るいですよ!」という作り手のニコニコ笑顔が思い浮かぶようなエンドクレジットの映像。

いろんな場面の中で、役を離れた原田知世を中心とするキャストたちが、心から楽しそうに笑っているんです。特に原田知世さんかわいい。ほんとにかわいい。

ここの原田さんがそれほどまでにかわいいのは、「心から」っていうのがポイントじゃないかと思います。本作は彼女のデビュー作で、演技も相当ぎこちないし、劇中ではずっと表情が硬いんです。エンディングではそこから解放されて、まるで亀仙人の甲羅を下ろした悟空のよう。素の笑顔のかわいさときたら、それはもうえげつない破壊力でした。

これがあるから、すごく晴れやかな気持ちで見終われました。

 

実験室で寝てる→からの「ヨイショ」って起き上がるところからもうかわすぎ。 

 

結果、どうしても「面白かった!!」というしかない心境になっていました。

こういうのを見ると、なんか映画については「完成度」がなんだ、「ストーリーの整合性」がなんだ、という議論って意味がないのかもなあと思ってしまいます。そういう視点では全然ダメな(というか、そもそもそういう方向を狙っていない)作品が、こうやってわけのわからないパワーを持って、すごく人を感動させたりもしているわけだから。

本当に映画って面白いですね。

時をかける少女

時をかける少女

 

 

ちなみに、ロケ地巡りで行った場所2ケ所のうち、1ケ所めの「艮神社」は、タイムトラベルのシーンでけっこうフィーチャーされてました(クスノキはストーリーと一切関係なかった)。これは嬉しかった。「あ、ここ知ってる!」ってなりました。2ヶ所めの高校の階段は全然わからんかった。。あんなところあったっけ?

 

同じ大林監督の尾道三部作である『転校生』も、今度観てみようと思います!