ぼくのネタ帳

映画や日々の考えについて書いてます。

**を見て考えたこと(電車内にて)

この記事ではとある気持ちの悪いものについて延々と書いているので、食事中の方やそういうのが嫌いな方は、そっとページを閉じてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてこの記事では、この間電車内で見たゲロについて書く。

 

電車に乗り込むなり、ある一帯の席が空いているのが見えた。それなりに混む時間なのに、ツいている。しめしめと思いつつ、ほんの少し早歩きしてそこに直行。無事席についた瞬間、皆がそこに座りたがらなかった理由がわかった。

 

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そう、ゲロである。何者かが、ぼくの真正面の座席でゲロを吐いたらしい。「そのもの」はザッと片付けられた後のようだが、グリーンの座席に白い痕と、何かの食物のかけらのようなものがチラホラ残っていた(たぶん、本格的な掃除は今夜車庫に戻ってから行われるのだろう)。

 

そんなわけで、ぼくがラッキーと思って少し早歩きしてまで確保した席は、皆がためらった末に避けることを選んだ、「空いてても座りたくない席」であることがわかった。しかしである。しばらく座っていると、この席ならではの良いものが見られることもわかってきた。

以下は、まさにその席に座っている最中に携帯で書いたメモ。

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ぼくは世の中のほとんどの物事に関心が持てない。でも、この目の前のゲロは面白い。彼には関心が持てる。

先ほど席につくなり、5感を研ぎ澄ませて、彼の状態を確認した。

まずにおいだ。 このゲロが臭うかどうかは、あと15分ほどいることになる、この車内の快適さを大きく左右する。少しチーズのような酸っぱいにおいがあるが、うん、問題ない。口で息をしていればそれほど感じない程度の臭いだ。

次に見た目。ここに座っている間はiPhoneを見ているつもりだが、時には彼が視界に入るかもしれない。そうなったときに、不快さを感じるほどの醜い容姿なのかどうか。一度勇気を持って、直視してみよう。うん、それほどではない。もう乾いているし、大方駅員さんか誰かが片付けをしてくれたようだ。

さて、最後にこのゲロをめぐる乗客の人間模様。これが一番面白いのである。通常、混雑した電車内で座席が空いていないとき、人びとは何食わぬ顔で立っている。そして電車が駅に近づくと、座っているものたちの動向をそっと伺う。今このOLは本をカバンにしまったが、次の駅で降りてくれるのか、それとも降りずに今度は携帯を取り出すのか。目の前のこのおじさんは何駅まで眠る気なのか。

立っている人たちはみんな、本当は座りたい。それはそうだ。立っていたい奴なんていない。席に座るチャンスがあったら絶対に逃したくない、と内心ではソワソワしている。しかし、そのような欲望を人はうまく隠してしまう。席が空いたら、「あ、空いたんだ、ふうん」という感じで座る(一部のおばさんは別だ。彼女らだけは、空いた席を見るなり人を押しのけてかけよるハングリーさを持っている。そういえば、おじさんがそれをやるのは見たことがない。なんでだ?)。

ところが。このゲロ席があることで、人々の欲望が浮き彫りになる。電車がホームに滑り込み、ドアが開くと、彼らは空いた座席を見つける。けっこう混んでるのに!チャンスだ!こうした瞬間の喜びと焦りは、そうそう隠せるものではない。座席に近づくとき、みんなつい、少し足早になってしまう。そして席に近づいてからようやくゲロに気づき「うわっ」と顔をしかめてその場を去る。その一瞬の加速と急停止の中に、浅ましくも愛おしい、人々の欲望が表れるのである。

 

ちょっとばかりくさい思いをしてでも、あの席に座る価値はやはりあった。面白い15分間だった。