ぼくのネタ帳

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映画「IT / イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」のネタバレ感想

先週金曜公開の「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」を見てきた。

 

予告編はこのような感じ。

 

下の記事でも書いたが、楽しみにしていた続編だ。

 

仕事終わりに109シネマズ木場にて、IMAX上映で。ここは周りにご飯の美味しいお店がいっぱいあるし、公開初日の話題作でもそれほど混まない穴場。

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109シネマズ木場のIMAX

点数:55点 脅かし系のホラー演出がてんこ盛りで楽しい!でもご都合主義てんこもりすぎて大減点。

 

まず良かったのは、最後まで飽きずに見られたところ。普通に怖くて、退屈はしなかった。

ただ、「怖い」にもいろいろある。

「リング」みたいな日本製のホラーなら、じわじわと真綿で締めつけるような怖さ。「ホステル」みたいなスプラッタホラーなら、グロい・痛い・やめて〜という怖さ。さまざまな「怖さ」の中でもいちばん単純なのが、いわゆるジャンプ・スケア(Jump Scare)=びっくり系の脅かしだ。

怖いバケモノがいる。ひいいい、あのロッカーに隠れよう、ああどうしようアイツが来る、怖い怖い怖い。。あれ、もういない、ホッ、あ〜助かった〜〜〜〜、ドン!!!!!!!!!!

という、この手のヤツだ。とてもシンプルで、おそらく映画をたくさん見ている人ほど「下等」と見なしがちな演出。だけど驚かされるのって生理的にイヤなものだから、ある種「怖い」とは言える。ジャンプスケアを馬鹿にする人たちだって、「怖くない」と胸をはっては言えないと思うのだ。だって現にビクッとはしてしまうし、ジャンプスケアの気配を感じたら、誰だって緊張して身構えたりしてしまうものだから。

ちょっと脱線したけど、本作の怖いところはほとんど全部ジャンプ・スケアでできていると言っていい。とにかくずっと「緊張→ビックリ」「緊張→ビックリ」、この繰り返しだ。だから気を緩める暇がない。この辺りは、IMAXが効果的に働いていたと言えるかもしれない。どでかいスクリーン、どでかい音でいきなりショックシーンがくるので、心臓を物理的に揺らされてるくらいの迫力があった。

さらに本作の強みは、敵役たる"IT(イット)"ことペニーワイズが、いろんなものに姿形を変えられるってこと。これもまた、ジャンプ・スケアと相性のいい特性だったと思う。あるときはシャイニング、あるときは遊星からの物体Xと、場面ごとに出てくるクリーチャーが違うので、次はどんな姿でくるんだ?とドキドキワクワクする。しかも、CGでできたクリーチャーたちは、どれもとてもよくできている。この辺り、映像技術が進化した現代で再映画化した意味がちゃんとあるなと感じた。

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予告編に出てくるばあちゃん

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この後、予想のななめ上をゆく大変身

そんな訳で、少なくとも退屈だけはしない作りになっている。

 

次に、よくなかったところ。前作でも少し気になっていたが、そもそもこの話全体が、ルーザーズクラブが恐怖に打ち勝って成長する」ためのご都合主義が多すぎる。敵、設定、脇キャラなど、全てが彼らの成長のために配置されているようにしか見えず、ドラマとしてどうでも良くなってしまう。

 

「ひとの恐怖を好む」怪物であるペニーワイズは、町のこどもたちを次々と殺戮していくが、何故かルーザーズクラブの面々にだけはトドメを刺さず、延々と脅かしだけを続ける。そしてモタモタしているうちに、クライマックスで恐怖を克服され、打ち倒されてしまう。仮面ライダーが変身し終わるまで待っているショッカーと同じ。ヒーローの都合に合わせているようにしか見えないのだ。しかもこの流れ、前作と全く同じというのもキツい。 

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クライマックスの舞台も見た目ほとんど一緒

 

さらにたちが悪いことに、今回はメンバーの一人であるマイクが、「チューダーの儀式」というこれまた都合のいい「ペニーワイズ対策術」を見つけてきてしまう。

 

チューダーの儀式のルールはこんな感じだ。

①メンバー全員がいないといけない。

②おのおの、忘れていた思い出の品を探してくる。この過程で怖い目に遭うがガマンする。ちなみに思い出の品探しはひとりで行くこと。

③みんなで手をつないで目をつむり、「光を闇に(turn light into darkだっけ)」と唱える。

まず①の時点で、「すでに冒頭でひとり死んでいる件」がちょっと気になるが、この点には誰も触れない。さらに②だが、このルールはチューダーの儀式を考案したネイティブアメリカンたちが定めたのだろうか?どう考えても「27年間町を離れ、記憶から逃げてきたひとたちが、過去に改めて立ち向かう」ための専用のルール、という感じがするのであるが。この件も、なんでそんなことをする必要があるのか等、儀式の理屈の説明もなし。マイクから①、②あたりのざっくりとしたルール説明を受け、とにかく集めろと言われるや、ルーザーズクラブの面々たちはなんの疑問も持たず行動開始してしまう。その後何をするか(つまり③の内容)については、皆が思い出の品を集めた後、マイクの口から説明されるまで、誰も質問しない。観客の興味を引っ張るために謎を残したいんだろうけど、いくらなんでも不自然だ。皆いい歳こいた大人なんだから、何がゴールかくらいはじめに確認しろ!

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闇雲に「思い出の品」さがしを開始するメンバーたち。案の定、儀式の意義をわかっていないために暴走しだすやつも出てくる。

 

さらにこの他にも、チューダーの儀式やペニーワイズの退治方法については明文化されていないルールがいくつかあって、これらが後出しジャンケン的に出てくるので、どこまでもどうでもよくなってしまう。

しかもこれだけ時間をかけて①、②、③と準備したにも関わらず、チューダーの儀式は「マイクがみんなに嘘をついていたから」というよくわからない理由により御破算になり、結局は前作と全く同じ、「お前なんて怖くない」方式のリンチでペニーワイズを倒すことになるのである。なんだそれは。この2時間のすったもんだはいったい。。

 

こんな具合だから、ドラマとしてはバカバカしくって、とても真面目に見ていられない。そして残念ながら、クライマックスに向かうにつれてホラー要素よりドラマ要素の方が比重が大きくなるので、どんどんつまらなくなる感は否めなかった。青春モノのツボを抑えたエモ良いシーンも、たまーにあるんだけどね。

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正直ここだけはちょっぴり感動してしまいました

総合的には、シーン単位ではホラーとしてもドラマとしても、「いいな」というところはあるんだけど、ひとつの映画としてはあんまり面白くなかったかな、という印象。後半で挙げた不満点なんかは、きっと原作小説だと人物の内面描写とかできっとカバーされているんだろうと想像したりもするので、ぜひいずれ挑戦してみたいと思う。

 

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